つむじ風。
その日はひどい暑さで、青空に入道雲がいくつも力こぶを作って胡座をかいている。
一雨くるな…
街はずれのレストランで、俺たちは食事を摂った。
いつものように俺は振舞う。
だが、ポケットには昨日買ったあのネックレスが入ったままだった。
店を出てしばらくすると、
案の定、大粒の雨が落ちてくる。
タクシーも見当たらず、
雨宿りできる店もなく、
ただ雨をしのげる場所を捜して、走った。
やっとの思いで、線路の高架下に逃げ込むが、すでにずぶ濡れだった。
そんな俺を気遣って、
おまえはハンカチを差し出した。
誰もいない、
二人の息遣いだけが響く…
「博子」
これが最後だ、おまえを騙すのは。
俺は覚悟を決めた。
「これをおまえにやる」
とあのネックレスを取り出した。
濡れた指で触れると、
余計にそれは光を放つ。
そっとおまえの首に手を回す。
細くて白い首だった。
本当は、おまえにはこんなものなんか必要ない。
何もしなくても、ただそれだけで
十分きれいだ…
そっと華奢な指が胸元の石に触れる。
「嬉しい…だけどもらえない」
ああ、そう言うと思ったよ。