つむじ風。

付けたばかりのネックレスを取り外すと、俺の手に握らせた。

「ごめん、私、今日は帰る」

「ふざけんなよ、帰るだと?
ここまで気をもたせといて、どういうつもりだよ」

俺は動揺するおまえの細い手首を強くつかんで、引き寄せた。

「今夜、おまえを抱いてやるよ」

何百回と言ってきたこの言葉。

言い慣れていたはずなのに、
今は胸が引き裂かれるようだ。

「おまえもずっとそれを期待していたんだろ?」

おまえの顔色が変わる。
当然だ、おまえを「軽い女」だと侮辱してるんだからな。

「離して」

「つべこべ言わずに来いよ!」

「嫌!」

必死に俺に抗う。

そうしているうちに、掴んだ手首がするりと俺の手から抜けてしまった。

細い体が後方へと倒れこむ。

…博子!

「おい、大丈夫か」
手を差し伸べようとした時だった。

左頬に電流が走ったような痛みを覚えた。

目の前には大粒の涙をこぼす
美しい女がいた。

狂おしいほどに、愛しい女がいた。

…博…子

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