つむじ風。
抱きしめたかった。
今のは何もかも嘘だ、とわめきちらして
おまえをこの胸に抱き寄せたかった!
「……」
しばらくの沈黙の後、
おまえは雨の中に飛び出した。
俺の口が、呼び止めたい!と震えていた。
俺の足が、追いかけたい!と叫んでいた。
俺の腕が、抱きしめたい!と泣いていた。
だけど
俺の心が、許さない、と言っていた。
それだけはしてはならない、と。
ネックレスを握りしめた手を壁に打ち付けた。
博子、わかったろ?
俺はこんな男だ。
忘れてしまえ、こんな最低なやつ。
おまえの中から、新明亮二すべてを消し去ってしまえ。
永遠に…
閉じた瞼に映る、おまえのこぼれ落ちる涙。
初めて見る、その涙。
「仕方ねぇだろ…
こうでもしなきゃ、おまえは…」
雨はなかなか止まなかった。