[完]愛しいキミは♂大親友♀ 〜女装男子の悩める日々〜
あたしは机の横にかけた
鞄に手を伸ばし、中から
そっとある物を取り出した。



「………何、それ?」



陵の声に促されて、小さな
紙袋から中身を取り出す。



「ハンカチ?」



「うん。

歩いてる時に、あたしが
冷や汗かいてるからって
貸してくれたの」



紺色の、シンプルな男物の
ハンカチ。


これだけが、あたしの元に
残ってしまった。



名前も連絡先も知らなきゃ、
会って返すこともできない
ってわかってるけど――

それでも何となく、洗って
アイロンをかけた後、鞄に
入れたんだ。


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