天使の笑顔で




「涼真君…」


まゆのお母さんが俺の名前を呼ぶ


「はい」


「ここでこんなこと言うのは何なんだけどね」


「……はい」


「10年前、
夫が心筋梗塞で亡くなったの
まゆはその頃から心臓が悪くて
悲しいのに泣けないほど辛かったはず」


そうだったのか


どうりでお父さんの姿を見たことないわけだ


「でもまゆは今でもこう言ってくれてる
お母さん、産んでくれてありがとうって」


その言葉を聞いた瞬間


思わず涙が溢れた



まゆはいつでもそうなんだ…


自分の病気と真っ直ぐ向き合って

逃げたりしない



俺がそんなまゆと向き合えるのは
きっと心の強いまゆだったからだ



「まゆは、明日死んでも後悔しないって言ってた
だから、涼真君、
まゆが亡くなっても
後悔しないでね」


「はい、わかりました」



俺はいつまでもまゆを愛してる



それだけは曲げちゃダメだ






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