天使の笑顔で




「1059号室の花沢まゆさんか…」


「心室細動の時に目が覚めたのは奇跡だけど
そろそろターミナルを考えなきゃな」


なんのことだろう?


医療の事は何もわからない




「まゆの話してたな
ターミナルとかかっこよくね?」


俺が軽い気持ちで明莉に言った



しかし明莉は笑っていない



「……明莉?」



「……バカ!」



明莉が肩を震わせながら


心に余裕のない俺に言った


「ターミナルは終末期。
亡くなる準備をするんだよ。
もうすぐ死んじゃうってことだよ」


やがて明莉は涙を流す



「え?」




終末期?


は?


なにそれ?



俺は意味がわからなかった






いや……わかりたくなかった…



まゆの状態は悪いけど


まだ元気じゃん



亡くなる準備なんて…冗談じゃねえよ





「もうすぐ死ぬのかよ」


「やだ……」




入学当時


元気そうに走り回るまゆの姿を思い浮かべる


あの天然も


あの小さな体も


あの大きな瞳も


あの可愛い声も


そしてあの笑顔も…


全部リアルな夢と化するのか…


遠くに行ってしまうのか…




急に俺の思いがまゆ一色に染める



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