たった1ヶ月の恋

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「あと3分!」

台所ではしゃいでいるハチを、リビングにある椅子に座って見ているあたしとイブ。


「落ち着きなよ、ハチ」


ハチが言った、"あたしとやりたいこと"というのを、今ちょうど作業中だ。


『海と一緒にアップルパイ作りたい! んで、一緒にそれを食べたい!』

あのときそう言ったハチ。

まさに今、アップルパイを作っている最中だった。焼き始めて、あと3分で終わるというところ。


「あと2分ー!」

テンションが異常なハチ。何がそんなに楽しいのか分からないけど、ハチなりにやりたかったことなんだから、あたしも楽しもう。


でも、やりたいことなら他にもあったんじゃないかな? 死神って、人間と違って楽しいこと出来ないだろうから。


「楽しいね」

あたしがハチにそう言うと、ハチは少し驚いた顔をした後、ニッと笑って大きく頷いた。


「すっげぇ楽しい!」

顔に出ちゃうんだな、楽しいと。いつもにも増して、笑顔が多い。
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