たった1ヶ月の恋
「ほら、アップルパイ食べよ」
あたしの話聞いてる間に、ハチとイブは喧嘩のことを忘れてしまったみたいで、素直に椅子に座った。
「いっただっきまーす!」
いつもと同じ、ニコニコ笑顔でアップルパイを食べ始めたハチと、無言で食べ始めるイブ。
さっきまで喧嘩してたのに、呑気だなー。まぁ、忘れてくれた方が、こっちとしてはいいけどさ。
「美味しいねー」
「うん、美味い」
そう言って笑ってみせるハチだけど、その表情がは少しだけ泣きそうなのが分かった。
何で? ハチがやりたいって言ったことやってるのに。
どうして、そんな泣きそうな顔するの?
「…俺始めてアップルパイ食った」
無言で食べていたイブが、急にそう言った。
あたしは、イブが始めて仲良くしてる人間だもんね。アップルパイを食べたことある死神なんて、普通いないでしょ。
「そっか。美味しいでしょ、アップルパイ。また今度時間がある時に作ってあげるよ」
「……あぁ」
どうしたのかな、2人とも。
さっきまでギャーギャー騒いでたくせに、急に大人しくなった。
「海、俺まだまだやりたいこといっぱいあるんだ。付き合ってよ」