たった1ヶ月の恋

「とにかく、いつかまた会えるし。とりあえず今日でお別れなんだ、海。」


決まったことなんだ。あたしには引き留める権利がなければ、それをする力もない。どうやったって、離れなきゃならない。


「………じゃあ、今日はずっと一緒にいようよ……イブも、ハチも…ずっと一緒に」

それはイブもハチも同じ気持ちだったらしくて、笑って小さく頷いた。


「うん、今日は楽しいこといっぱいしよう。イブ、お前今日は遅くまで付き合えよ」

「あぁ、分かってる」


イブと居た期間は、ハチよりももっと短い。2週間ぐらいかな。たった2週間しか、一緒にいられなかった。

けど、居なくなるというのは、考えられない。ずっと家にいて、それが当たり前になってたから。


いざ、離れていくって聞くと、寂しくてしょうがない。

「そんなあからさまに落ち込むなよ。また会えるって言っただろ」


あたしがいつまでもこんな顔してたら、イブが帰りづらいよね。今だって、心配してくれてる。

今日1日を楽しく過ごすことだけを考えて、最後くらいは笑顔でいよう。


「そうだよね、また会えるんだもんね。あー、あたしが次イブに会うときは、おばあちゃんになってるのかな?」


少し残っていたアップルパイをかじって、いつも通り話をする。あたし、おかしくないよね?
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