たった1ヶ月の恋


「何で海が気にしてんだよー。体温なんてなくても、こうやって手だって繋げてるし、デートだって出来るし。俺はそれで十分幸せだからさ」


ハチは傷ついた様子もなく、サラッとそう言った。

そうだよね。

体温がなくたって、ハチには変わりないんだから。手が冷たくたって、あたしの大好きなハチのまま。


「まだまだ海としたいこといっぱいあるから、風邪引かれたら困るし。だからさ、早く帰ろうぜ」


「うん…、そうだねっ」


最初会ったときよりも、ハチは随分大人っぽくなった。あたしなんかより、ずっと。


あ、でも、初めて会ったのは10年前だっけ?


あたしは覚えてないけど、そんなに昔に会ってたんだよね、あたしたち。


「ハチ、あと3日であたしたちが出会ってちょうど1ヶ月だよ」


「うん、知ってる。長いよな、人間界の1ヶ月って。俺らの世界とは全然違う。」
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