たった1ヶ月の恋

動物的本能…。


「なんか凄いね、そんなことまで感じ取れちゃうんだ…」


「うん。だって俺凄いもん。何でもできるよ」


自慢気に言うハチは何だか可愛くて、子供みたいに見えた。

ほんとに、何でも出来ちゃいそう。


「じゃあハチがいれば、あたし何でも出来ちゃうね」


「うん、海、したいことあるの?」


したいことって言われても、急には浮かんでこない。

それは多分、特にしたいことがあるわけでもないからだと思う。


「んー………特に、ないけど。あ、でもね、あたしずっとハチと一緒にいたいな」


あたしの言葉にハチが答えてくれることはなくて、ただ、ニコっと笑うだけだった。


「ほら、海遅刻するよ」


「あ、うん…行ってきます」


「行ってらっしゃい」


人間の寿命と、死神の寿命。

わざわざ比べてみなくたって、その差は明らかだろう。現に、ハチはもう300年以上も生きてるんだから。


ずっと一緒に、なんて、不可能な話だ。

どう考えたって、あたしの方が先に死ぬ。


でも、なんか、返事をなかったのはそれを思ったからじゃない気がした。

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