たった1ヶ月の恋
涙の別れ
「海、行くよー」
「うん、今行く!」
天気予報通りの見事な晴天。海に行くにはちょうどいい天気だった。
「はい、乗って」
自転車に乗ってあたしを見るハチは、今人間に見える姿になっている。だから二人乗りをしても変じゃない。
「ちゃんと捕まってろよ」
死神が二人乗りをするなんて変だけど、ハチらしい。人間みたいに過ごしたいんだと思う。
荷台に乗ってハチに捕まると、自転車は勢いよく前に進んだ。軽々漕いじゃうところが男の子らしい。
「寒くない?」
「大丈夫、いっぱい服着てきたから」
朝から出るのは寒いから、せめて昼過ぎてからにしよう。そう言ったのはハチだった。
自分は寒さなんて感じないのに、あたしのことを気遣ってそう言ってくれた。
「風邪引くなよー?」
「大丈夫!」