たった1ヶ月の恋

「………好きな食べ物はリンゴだよ」

正面に座っていたハチが、ポツリと呟いた。


「へぇー…、リンゴが好きなんだ。美味しいもんね。あたしも好きだよ、リンゴ」


確か冷蔵庫に隣のおばさんがくれたリンゴが入っていたはず。


仕方ない。今日学校まで連れて行ってくれたお礼に、リンゴをあげようか。

「海も一緒に食べよう」

「うん」

ニコニコしているハチが、どうしてもペットのように見えてしまう。


そんなことを思っていられるのも、今だけなんだろうな、って…

いずれはハチに殺されてしまう運命なのだから。


「ハチ、リンゴ切るの面倒だからこのまま食べて。」

「もっと気を使おうとか思えないのかね。」


あたしの手元から離れて宙を舞ったリンゴが、ハチの手のひらに落ちた。

「思わない。ナイスキャッチ」


不満そうな顔をしながらも、すぐにリンゴにかじりついた。

「うまっ」


嬉しそうで何よりだ。
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