たった1ヶ月の恋

「新学期以来あたしには何も見えてなかったけど、昨日夢に出てきたよ。ハチ、だっけ?」


あぁ、夢の中で言ってたっけ。


美弥に頼んだって。

何を頼んだのかは教えてくれなかったけど、あれはほんとだったんだ。


「"海のこと、よろしく"って」


……最後まであたしのこと。

どれだけ優しいんだ、死神のくせに。


「"海、自分では言わないけど、ほんとは泣き虫で寂しがり屋だから、側にいてやってほしい"って。あの人はあたしよりも海のこと分かってるよ。一番に思ってくれてる。じゃなきゃわざわざあたしにこんなこと頼みに来ないでしょ?」


恥ずかしいなぁ、もう。


泣き虫なのも、寂しがり屋なのも、ハチに出逢うまでは誰にも見せなかったんだよ?


辛いことがあっても泣かなかったし、寂しくても平気な顔してた。だって、それが当たり前だったんだもん。


家に帰っても、その感情を見せる人がいなかったんだもん。


「愛されてるね、海」


「…………うんっ」


だから最初、ハチが死神としてあたしのところに来ても、出て行ってなんて言えなかった。


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