たった1ヶ月の恋

「ただいま」って、あたしが言ったときに「おかえり」って、返事が帰ってくる。それが何よりも嬉しかった。


返事が返ってくることって、幸せなことなんだって。返してくれる相手がいるとって、幸せなことなんだって。


だから追い出せなかった。


あたしの魂を貰いに来ただけだったけど、あたしにとっては、家であたしの帰りを待っててくれる人だったから。


「嬉し泣きでもするかと思ったのに」


「泣かないよ。もう泣かないって、ハチと約束したから。ほら、心配かけちゃいけないし、ずっと笑ってなきゃね!」


小さい頃に両親を亡くして、あの日から心にポッカリ穴が開いたみたいだった。気づかないフリをしていたけど。


それももう、なくなったよ。

いつの間にかなくなっちゃってた。


ハチとイブのおかげ。



「海、退院したら、アップルパイでも食べようか」


「食べる!」


ハチは、俺のこと忘れないで、って言ってたけど、忘れるわけないよ。この先何年経っても、何十年経っても、あたしの一番はずっとずっとハチだから。


< 189 / 202 >

この作品をシェア

pagetop