たった1ヶ月の恋

守らなくてはならない存在


「ハチ、寒いね」

「俺寒さとか感じないから分かんないよ。」


ハチが現れてから一週間。

終業式を終えて、帰ってきたあたしを出迎えたのは笑顔のハチだった。


暖かいココアを作って待っていたらしいが、あたしが飲む頃には冷めていた。

まぁ、こんなのも悪くないかな。


「へぇー、死神って寒さも感じないんだ。いいなぁ…」


2人で窓の側に座って、外を眺めながら話していた。

4日後には死んでしまうというのに、我ながら能天気な性格だと思う。ほんとに。


「いいじゃん、寒いって。それって体温があるからこそ感じられるもんだし。」

そうだった。


前ハチに手に触れたとき、その手の冷たさに驚いたんだよね。

そうか、死神には体温がないのか…


だからココアが冷めてるのが分からなかったんだよね。マグカップが冷たくても、ハチには分からないんだから。


「それもそうだね…」

寒いと感じられるのも、そう考えてみれば悪いことじゃないのかもしれない。
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