たった1ヶ月の恋


「高級なやつだよっ。ケーキ屋さんでいっちばーん高いアップルパイ買うの!」


「いいね、それ(笑)」


「卒業祝いってことで」


「行こっか」


去年、美弥が一緒に行こうと言っていたケーキ屋さんに、まだ一度も行ったことがなかった。


あれっきり、そんな話は出てこなかったから。でもそのお店、ケーキバイキングだった気がするんだけど。


「アップルパイなんて売ってるの?」


「海知らないの?あそこのアップルパイ、美味しいって有名なんだよ」


「でもあのお店、ケーキバイキングだよね?」


「…あぁ、そうだった」


まぁ、美味しいならどっちでもいいんだけどさ。

これから忙しくなるだろうから、きっとこうやって美弥と遊びに行けることだって減ってくるだろう。


美弥は近くの専門学校に。あたしは少し離れた短期大学に行くことになっている。美弥と離れるのは寂しいけど、やりたいことが違うんだから仕方ない。


そしてあたしは、今住んでる家から離れなければならない。あそこから大学に通うのはさすがに無理だから。

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