たった1ヶ月の恋


「また帰ってくるんだよ?」


「分かってるよ、じゃあね」


「うん、バイバイ」


引っ越しの日、美弥の家に挨拶に来た。夕食を食べさせてもらったり、泊まらせてもらったり、色々迷惑かけたから。


迷惑かけたはずなのに、美弥のお母さんは笑顔で「またいつでもいらっしゃい」そう言ってくれた。


何度感謝しても足りないくらい、美弥には助けられた。あたしにとって美弥は、家族も同然。大事な大事な存在だ。


ずっと、一番の親友だからね。




予定の時間よりも早く家を出たのは、美弥の家に寄るためだったけど、理由はそれだけじゃない。

ハチと一緒に行った場所に行ってみようと思っていたから。


時間がそんなにあるわけじゃないから、すべての場所には行けないけど、少しでもハチと一緒に見た景色を覚えていたいから。



ここを離れる前に、目に焼き付けておきたい。


「たしか、こっちだったよね…」


曖昧にしか覚えていない道を、辿っていく。


まるでハチに会いに行くみたいで、一緒にいたときの感覚が戻ってきた。ドキドキする、この感じ。

< 194 / 202 >

この作品をシェア

pagetop