たった1ヶ月の恋
『泣かないよ』
サラっと言ってのけた美弥に、少し体が硬直した。
それは、あたしが死んでも悲しくないってことなのかな?
『…………どうしてあたしに何も言わずに逝くんだ…って、怒っちゃうよ』
「え?」
予想外の言葉に戸惑う。
美弥はそれだけあたしを大切に思ってくれてるのか…
『海が幽霊でも妖怪でも、何の姿でもいいから、最後にあたしに会いに来ないと許さない』
心がホッと暖かくなるのと同時に、視界がぼやけた。
「じゃあ、あたし死んじゃっても、必ず美弥に会いに行く」
『よろしい。まぁ、そん時はちょっと泣いちゃうかもしれないけどね(笑)』
両親がいないあたしにとっては、美弥は家族のような存在だった。
離れたくないというのが本音。
ハチにはこんな顔見せられない。
人間を殺すのが好きじゃないハチが、泣いてるあたしを見たら、もっと殺しにくくなるだろうから。