たった1ヶ月の恋
「イブもほんとはいい人だよね。あたしのこと守ってくれたもん。」
あのとき、あたしはほんとに死ぬかと思った。鎌が振り下ろされる瞬間、怖くて怖くてたまらなかった。
イブがいなければ、きっとあたしはとっくに血にまみれて死んでいただろう。
「おう、いいやつだよ」
イブが消えた場所を見つめ、そっと呟いた。その目は優しげで、嬉しそうな目だった。
「あ、そうだ。ハチ、朝いなかったけどどこ行ってたの?あたし結構呼んだんだけど」
部屋を見渡したとき、ハチがいなくて寂しかった。あの瞬間の孤独感は、きっと何度味わっても慣れないだろう。
「あぁ……、海が起きないうちに外にいた悪霊を消してたんだ。多分、それも海を殺しに来た死神達の遣いだと思うけど…」
わざとハチをおびき寄せて、あたしを殺しに来たってわけか。危なかった。
「今度からは、絶対に海を一人になんかさせないから。今日はほんとにごめんな…」
ショボンとして謝るハチが可愛くて、思わず頬が緩む。そんな顔されたら、何でも許してしまいそうだ。
「大丈夫大丈夫。ほら、こうやって怪我も治ったし、イブとも若干仲良くなれたし、よかったよ。」
イブは完全にあたしに心を開いてくれたわけではない。少し、話せるようになっただけ。
「ハチ、朝ご飯食べよ」
綺麗に戻ったリビングの台所に立つ。リンゴあったかな、なんて考えながら、朝ご飯を作り始めた。