たった1ヶ月の恋
あーヤダヤダ。
これからこんなことが続くって思ったら、気が重くなる…
「俺もだバカヤロー」
常に不機嫌そうな顔をしたイブが言う。イブの場合は気が重いんじゃなくて、ただイライラしてるだけでしょ。
「ほら、海、ちゃんと掴まっててよ。」
そう言われたのと同時に、体がフワリと浮いた。ハチの顔が目の前にある。世間一般で言う、お姫様だっこってやつだ。
久しぶりの学校だから、当然久しぶりのお姫様だっこなわけで……緊張しないわけがない。
心臓バクバクだ。
「海、捕まってろって」
そんなことを言われても、どこに掴まればいいのか分からない。正直、目のやり場にも困ってる。
「No.8、さっさとしろよ。無駄話してる場合じゃねぇだろ。たくさん寄ってきてるぞ」
寄ってきてる?
あぁ、さっきみたいなウヨウヨした物体ね。微かに見えてるけど、気持ち悪い。
「うん、分かった」
ハチはそう言うと、あたしの腕を掴んだ。
「えっ?」
「すぐに着くから」
捕まれた腕が、ハチの首へと回る。顔の距離が、さっきよりもさらに縮まる。