たった1ヶ月の恋

チャイムが鳴って担任が来て、席に着くと、ハチもイブも教室内を好きなようにフワフワ浮いていた。

「三学期始まって早々だが、明日から休み明けのテストだ。課題も出し忘れないようになー」


あぁ、忘れてた。

休み明けのテスト!!

冬休みはそれどころじゃなくて、勉強なんて全くしてない。ヤバいな、テスト。


「今日は、始業式終わったら各自解散。早く帰って勉強するんだぞ」


なんだ、じゃあ昼前には帰れるんじゃん。なんて、考えてると、横にいた美弥に腕をつつかれた。


「今日早く終わるんだからさ、ケーキ食べに行かない?どうせ暇なんでしょ?」

小声でそう言った。

「あぁ、例の駅前にできたケーキ屋さん?」

「そうそう。ケーキバイキングなんだけど、オープンしたばっかだから安いんだよねー」


行く気満々で話す美弥の目は、キラキラと輝いていた。余程楽しみなんだろう。

…が、さっきから気になっていたことがある。


「海ー、ケーキ食いに行くの?」

あたしと美弥の間に入って話しかけてきていたハチ。すーっごく、邪魔だ。←


「ね、海行くでしょ?」

ニーっと笑った顔を見ていると、何だかハチと重なって見えた。

あ、間にハチがいるからとかじゃなく。美弥がハチに似てるからだと思うんだけど。


………いやいや、そんなこと考えてる場合じゃなくて……

ただでさえ出歩くのは危ないのに、駅前に遊びに行っちゃってもいいのだろうか?


朝みたいなことになるんじゃない?ハチはいいとして、問題はイブだ。あの死神、朝の時点でイライラしてたよね。
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