たった1ヶ月の恋
「俺の仕事が増えんだろ。」
やっぱり。
案の定、イブは不機嫌なオーラを発していて、とてもじゃないけどこれ以上迷惑をかけられない。
「やー、ちょっと今日は……行けないかも。行きたいのは山々なんだけどね…」
あたしがそう言っている間にも、ハチは美弥の顔を覗き込んでいる。近い近い…、おでこくっつくよ。
「行けないの?」
「うん、今ちょっと色々問題があってね……、あんまり外出歩けないんだ」
実際にあたしも変なのが見えちゃうもんだから、あんまり出歩きたくない。
日に日にハッキリ見えるようになってきたのだが、家にはいないから怖くはない。
「そっかそっか。大変みたいだね。何かあったらいつでもうちにおいで。」
大して気にした様子もなく、そう言った。何も聞かないところが、意外と好き。
マイペースなのに、たまにサバサバしているときがある。だからあたしが一緒にいて楽だと思えるのだろう。
「うん、ありがと」
いつの間にかホームルームは終わっていて、すでに担任は教室にいなかった。
今から始業式があるらしい。
「海、霊感がある子には近寄らないようにして。俺らのことが見えたらマズいから。」
ハチの言葉に小さく頷いて、美弥と一緒に体育館に向かった。