たった1ヶ月の恋
「海早くー」
今日美弥は車で帰るらしく、お母さんがもう迎えに来ているみたいだ。
「ごめんごめん」
慌てて荷物を掴んで、小走りで美弥に近づくと、ハチとイブは急に鎌を構えた。
何かいるのか…
2人とも険しい表情で辺りを見渡している。2人が感じているであろう、嫌な雰囲気はあたしにも伝わってきていた。
「海、早く帰るぞ」
焦ったように言うハチに、美弥にバレないように小さく頷いた。
「あ、海乗ってく?」
自然な流れでそう言われた。いつもなら乗っていくところだけど、今はダメだ。
あたしと一緒にいたら、美弥も、美弥のお母さんも危険な目に合ってしまうかもしれない。
「今日は大丈夫、いいや」
断られると予想していなかった美弥は、一瞬キョトンとした表情を見せたけれど、すぐにまたもとの表情に戻った。
「そっか、じゃあ、気をつけて帰るんだよ」
「うん、ありがと」
玄関で別れて逆方向に歩き出す。自然と足取りが早くなった。
「人がいなくなったら、飛ぶよ」
あたしの隣にいるハチが、周りを見渡しながらそう言った。周りにあまり人はいない。