たった1ヶ月の恋
「さっき学校にいたとき、気配を感じた。俺とNo.8よりも、強い気配を。お前ら狙われてんぞ、上のやつらに」
そんなイブの声も、今は頭に入らない。どうしてハチは家の中に入ってこないんだろう、そんなことばかり考えていた。
外からは音もしなければ、ハチがいる様子もない。もしかして、ほんとにいないの?
「ねぇ、ハチは…?」
「心配すんな、ちゃんと戻ってくる。お前は俺の言うとおりにしろ、いいな?」
初めてこんなに優しいイブを見た。何だか、変な感覚。大したことじゃないなら、きっとこんな態度とらないでしょ?
「家から出るな。それと、絶対に1人で行動すんな。」
まだ新学期が始まったばかりなのに、少し外に出ただけでこんなことになるなんて。
「…分かった」
あたしがそう頷くと、イブは再び立ち上がってリビングを出て行こうとする。
ちょっと待ってよ、ハチは?
離れるなって言ったのはイブなのに、2人ともいなくなったら、あたし1人になっちゃうよ?
「イブっ、どこ行くのっ?」
「ん、あぁ……」
あたしがそう言うと、イブはハッとしたかのようにこっちに戻ってきた。
その表情からは、不安だということが読みとれる。あまり感情を表に出さないイブが、それを隠す余裕がないくらいに動揺している。
「ねぇ……、ハチはほんとに戻ってくるんだよね…?」
聞かずにはいられなかった。
このまま戻ってこなかったらどうしよう。そんな思いが頭の中をグルグルと回る。