To.カノンを奏でる君
 チュウの言葉に、祥多は硬直した。

 最近、よくこの手の質問をされる。そんなに自分はバレバレの態度を取っているのだろうか。


「お……前、まだ花音の事、花音って呼んでんだな。みんな中学に上がったら名字で呼ぶだろ」


 ははっと笑い、話を逸らそうとした祥多をチュウは睨みつける。


「はぐらかすなよ。真面目に訊いてんだかんな」


 真剣なチュウに、祥多の笑みは引き攣った。


「花音の事好きなのに、何で葉山と付き合うんだよ」

「付き合ってねぇよ。葉山が勝手に言いふらしてんだ」


 祥多はガリガリと頭を掻き、苛立ちを見せる。

 その言葉を聞いて、チュウは少しだけ安心した。


「何だよー。めちゃくちゃ心配したんだぜー」

「悪ィ。てか、マジで葉山にはビビった」

「でも、お前も悪いんだぞ。すぐに否定しろよ。みんなお前と葉山が付き合ってると思ってる」

「…………」

「花音も可哀想だろ」

「分かってるよ」


 ゆっくりしか歩けない祥多に合わせて、ゆっくり歩くチュウ。

 祥多は明日の事を考え、溜め息を吐く。


 本当にどうしようもない状況だ。取り敢えず、明日は朝一番に謝ろう。全てはそれからだ。

 そう意気込む祥多を横目に、チュウはやれやれと苦笑していた。


 いつまで経っても手のかかる友人だ。
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