To.カノンを奏でる君
 花音は頷きながら席を立つ。


「準備早ぇーよ、お前ら」


 祥多は慣れない手つきでリュックサックに教科書を詰め込む。

 花音と直樹は習慣化しているので帰り支度に手間取らない。まだ登校二日目の祥多だから手間取っているのだ。


「あらあら、タータン。それは持って帰らなくてもいいのよ?」


 直樹は祥多にアドバイスする。

 祥多が手に持っているのは英和辞典。あまり自宅では使わないので、ロッカーに置いておく事が認められている。


「あぁ、ほら、これも」


 リュックサックから取り出した資料集をバサッと机の上に放る。


「要領良く、帰りは楽しなきゃね」


 あっという間に祥多の帰り支度が済む。


「おぉ、昨日より軽ィ」


 リュックサックを背負った祥多は子どものように喜ぶ。


「ほらほら、行くわよタータン」

「おう」


 歩き出す二人の後を追う花音。

 少し美香子の事が気になり、教室内を見回した。が、美香子の姿はなかった。















「うぉー! 活気づいてていいなぁ!」


 祥多は浮かれている。あっち行こうぜ、と楽しそうに駄菓子屋に向かう。

 花音と直樹は顔を見合わせて笑った。お互い、今日はとことん祥多に付き合ってやろうと思っている。


「花音! 直! 早く来い!」


 急かす祥多に、花音と直樹は駆け出した。
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