To.カノンを奏でる君
「なぁ、直」

「ん?」

「花音と普通に親友でいられてるだろ、」

「まぁそうね」

「何か秘訣とかあんのか?」


 直樹は意味が分からず祥多を見る。

 何おかしな事を、と思った直樹だったが、祥多の真面目な表情を見て…冗談で訊いたわけではない事を悟った。


「何よ、いきなり」

「花音は俺に一線置いてるじゃんよ」

「あー」


 どうやら祥多は、花音が心を開いている直樹に嫉妬しているらしい。それが分かった直樹は小さく笑った。


「そんなにノンノンが好きなら、約束を撤回しなさいよ」

「……嫌だ」

「何で」

「何でも」


 一歩も譲らない祥多。直樹は溜め息を吐いた。


「そういう、何考えてるか分かんないところが原因なんじゃないの?」

「ゔっ」

「アタシはオープンだからね」

「つってもよー…」


 祥多がぶつくさ文句垂れている内に、花音が缶を三本抱えて戻って来た。

 冷めないよう気遣っている姿が、男心をくすぐる──と直樹は思う。案の定、祥多は花音に見惚れている。


「単純よねぇ」

「何が」

「べーつに! ノンノン、珈琲ちょうだい」

「あ、はい!」


 立ち上がって迎えに行った直樹を羨ましげに見つめる祥多。

 羨ましげに見てるだろうなと直感した直樹は、一人ほくそ笑む。


 本当にどうしようもない男だ。
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