To.カノンを奏でる君
第11楽章≫語る想い、傍にいる理由。
直樹は昔から女の子の様に可愛らしく、家族が面白がってフリルのドレスを着せたりしたせいで、女の子のように育ってしまった。
直樹の家族は自由奔放な家族で、直樹が女の子のように育っても何も言わなかった。寧ろ似合っているから良いのではないかと笑っている。
そんな家族が厳しく直樹に反対したのは、自由に伸び伸びと育てた直樹がカメラマンになりたいと言った時だけだ。収入が不安定だから、苦労するからと。
それ以外に関しては大いに賛成して来た。
直樹がワンピースを着ていようと、似合っていると言うだけだ。
こうして女の子らしく育った直樹だったが、初めて大きな壁に打ち当たった。
──幼稚園だ。
保育園に通わなかった直樹にとって、そこは未知の世界だった。
入園式早々、女の子の格好で来た直樹。まだ入園したてで、誰一人として直樹が男の子だとは思わなかった。
直樹が男の子だと知れ渡ったのは入園式の翌日。
友達になろうと一人の女の子に声をかけられ、直樹は名前を訊かれた。花園直樹と答えると、男の子みたいだねと言われ、平然と男の子だよと答えた。
その事に皆が驚き、直樹一人だけが呆けていた。
それから直樹はオカマだといじめられるようになった。
毎日泣き、友達もいない孤独一年を過ごした直樹。自分がおかしいのかと思い、直樹は女の子の格好をやめた。