To.カノンを奏でる君
「?」


 花音は頭を上げ、直樹に尋ねた。


「昔、よくつけてた」

「そうなの? 本当に女の子みたいだね、直樹君」


 花音に言われ、我に返った直樹は慌て出した。


「あ、あの…その、」

「じゃあ直樹君、スカート似合いそうだね」

「……え?」

「うん、直樹君、スカート似合うよ」

「でも、男の子がスカートっておかしいんだよ」

「何で?」

「何でって……」

「この前テレビの人が男の人なのにスカート着てたよ?」

「……僕がスカート着てもおかしくない?」

「うん。見てみたい」


 花音の言葉に、直樹は嬉しそうに笑った。


 スカートを着ておかしいと非難され続けて来た直樹が、スカートが似合うだろうと言われたのだ。嬉しくないわけがない。


「じゃあ明日はスカート着て来るね」

「うん!」


 直樹は泣きそうになるのを懸命に堪えた。

 本当の自分を受け止めてくれる人がいる。その事に本当に感動した。


 翌日、一年振りにスカートを着てカチューシャをして登校した直樹。

 直樹を男の子だと知っているクラスメイトが驚いている中、花音だけが目を輝かせ、楽しそうにしていた。


「やっぱり似合う! 可愛いよ、直樹君!」

「気持ち悪くない…?」


 不安そうな直樹に、花音は首を傾げる。
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