To.カノンを奏でる君
「直ちゃんさ、一人で苦しむなって言うけど自分はどうなの?」

「え?」


 突然、花音から笑顔が消え、真剣な表情になる。

 そして少し、その表情には怒りが込もっている事に直樹は気づいていた。


「直ちゃんが苦しい時はちゃんと傍にいるよ? 私だって直ちゃん支えたい」

「ノンノン…」

「そんなに頼りないかな、私。もっと頼って欲しいって思うのは私のワガママかなぁ?」


 ぽろっと一粒の涙が花音の目から零れ落ちた。

 花音のその言葉は直樹にとって衝撃的だった。花音がそんな風に思っていたなど、直樹は全く知らなかった。


「違う……違うの、ノンノン。アタシはただ」


 おろおろと慌てて出す直樹。


「何で自分が落ち込んでる時まで私を励ましてるの」


 涙声ではあるが、花音は既に涙を拭い、泣いてはいなかった。

 直樹は嬉しくなり、泣きそうになった。


「少し気落ちしてただけなの。気にしないで」

「私ばっか助けられてるじゃんっ」

「まさか。アタシばっか助けられてるのよ」

「え?」

「友達がいなかったアタシの友達になってくれたでしょう」

「あんなの、私の都合じゃない。私が友達になりたかったから」

「うん。それが救いになったのよ」


 直樹の笑顔に、花音はまだ納得がいかないようで複雑な表情をしている。
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