To.カノンを奏でる君
「帰ろう、ノンノン。送ってあげるわ」
笑みをそのままに、花音に手を差し出す直樹。花音は一寸ばかり躊躇した後、直樹の手を取った。
そうして二人は歩き出す。いつものように、繋ぎ合った手を大きく揺らして。
「送らなくていいよ、直ちゃん」
「あら、アタシじゃ不服?」
「そうじゃなくて、この頃変質者が多いでしょ?」
「なら尚更。ちゃんと送り届けなくちゃねー」
「そしたら直ちゃんが危ないよ」
「大丈夫よ。心は女でも体は男だから」
「でも」
「て言うのは建前で、本当はもう少しノンノンといたいだけ」
愛らしくウインクをする直樹に、花音は苦笑するしかなかった。
「直ちゃんはもう…」
「誉めてる?」
「誉めてない」
商店街を抜け、暗い夜道を歩いて行く。街灯が所々にあるだけの小道。
街灯の下を通りかかる時、吐いた息が白に染まるのをはっきりと確認出来る。
「寒いねー」
花音は隣で歩く直樹に言う。
「そうね」
お互いぼんやりとしながら言葉を交わす。
それからただ歩き続けた二人だったが、思い立ったように花音が言った。
「明後日、バレンタインだよね」
「あぁ、そうね、明後日は14日だわ」
「葉山さん…祥ちゃんにチョコあげるのかな」
「ふふ、気になる?」
「うん」
「そうよね。タータンは優柔不断……て、あれ? ノンノン、タータンにバレンタインチョコあげた事ある?」
笑みをそのままに、花音に手を差し出す直樹。花音は一寸ばかり躊躇した後、直樹の手を取った。
そうして二人は歩き出す。いつものように、繋ぎ合った手を大きく揺らして。
「送らなくていいよ、直ちゃん」
「あら、アタシじゃ不服?」
「そうじゃなくて、この頃変質者が多いでしょ?」
「なら尚更。ちゃんと送り届けなくちゃねー」
「そしたら直ちゃんが危ないよ」
「大丈夫よ。心は女でも体は男だから」
「でも」
「て言うのは建前で、本当はもう少しノンノンといたいだけ」
愛らしくウインクをする直樹に、花音は苦笑するしかなかった。
「直ちゃんはもう…」
「誉めてる?」
「誉めてない」
商店街を抜け、暗い夜道を歩いて行く。街灯が所々にあるだけの小道。
街灯の下を通りかかる時、吐いた息が白に染まるのをはっきりと確認出来る。
「寒いねー」
花音は隣で歩く直樹に言う。
「そうね」
お互いぼんやりとしながら言葉を交わす。
それからただ歩き続けた二人だったが、思い立ったように花音が言った。
「明後日、バレンタインだよね」
「あぁ、そうね、明後日は14日だわ」
「葉山さん…祥ちゃんにチョコあげるのかな」
「ふふ、気になる?」
「うん」
「そうよね。タータンは優柔不断……て、あれ? ノンノン、タータンにバレンタインチョコあげた事ある?」