To.カノンを奏でる君
美香子はこくんと頷き、吉原の反応を窺う。
「葉山はここで待っていろ!」
そう言い残し、吉原は長い廊下の先を目指して駆け出した。
教室には、倒れ込んだままの祥多がいた。急いで駆け寄り、祥多の様子を窺う。
脂汗が滲み出て顔に色はなく、悪い状態だという事が一目瞭然に分かった。
「時枝! しっかりしろよ、すぐに救急車来るからな!」
そう言い聞かせながら、吉原は祥多を抱き抱えた。向かう先は保健室。
登校して来たらしい生徒の視線も気にせず、吉原は走り出した。
「頑張れよ、時枝…!」
薄れゆく意識の中、祥多はその言葉を辛うじて聞き取り、重い瞼を閉じた──。
祥多が発作を起こして倒れた──。
花音がその知らせを聞いたのは、その日の夕方だった。
直樹が朝に電話をしたのだが、その時は花音も高熱で意識が朦朧としている状態で、とてもその知らせを聞ける状態ではなかったのだ。
花音の母は、花音の状態が落ち着いたらその事を知らせると言い、電話を切った。
そして花音の状態が落ち着いた夕方、母は花音に直樹からの知らせを伝えた。
「う……そだ……」
ただでさえ風邪で色がない花音の顔色が、この上なく悪くなる。カタカタと小刻みに震え、信じられないという表情で口を覆う。
母はそんな娘が痛々しく、見ている事がつらく目を背けた。
「葉山はここで待っていろ!」
そう言い残し、吉原は長い廊下の先を目指して駆け出した。
教室には、倒れ込んだままの祥多がいた。急いで駆け寄り、祥多の様子を窺う。
脂汗が滲み出て顔に色はなく、悪い状態だという事が一目瞭然に分かった。
「時枝! しっかりしろよ、すぐに救急車来るからな!」
そう言い聞かせながら、吉原は祥多を抱き抱えた。向かう先は保健室。
登校して来たらしい生徒の視線も気にせず、吉原は走り出した。
「頑張れよ、時枝…!」
薄れゆく意識の中、祥多はその言葉を辛うじて聞き取り、重い瞼を閉じた──。
祥多が発作を起こして倒れた──。
花音がその知らせを聞いたのは、その日の夕方だった。
直樹が朝に電話をしたのだが、その時は花音も高熱で意識が朦朧としている状態で、とてもその知らせを聞ける状態ではなかったのだ。
花音の母は、花音の状態が落ち着いたらその事を知らせると言い、電話を切った。
そして花音の状態が落ち着いた夕方、母は花音に直樹からの知らせを伝えた。
「う……そだ……」
ただでさえ風邪で色がない花音の顔色が、この上なく悪くなる。カタカタと小刻みに震え、信じられないという表情で口を覆う。
母はそんな娘が痛々しく、見ている事がつらく目を背けた。