To.カノンを奏でる君
「ノンノンは私にとって世界一大切よ。タータンはその次」

「それを恋って言うんじゃ…」

「だから、何で名前をつけたがるの? 要らないって言ってるじゃない。ノンノンは私に一番初めに光をくれた人だから、一番大切なの。ごめんね、タータン」


 にっこり悪気もなく謝る直樹。祥多は溜め息を吐き、口を開く。


「知ってるよ。お前にとって花音が一番だって事くらい」

「うふふ」


 直樹は笑いながら花音の方に、体の向きを変える。

 驚いたまま、どうすればいいのか分からず戸惑いが隠せない花音。そんな花音に、直樹は抱きついた。


「大好き。世界一大切だよ、花音」


 耳元でそっと囁かれた花音はツンと鼻が痛くなり、じわぁと涙が溢れて来るのを感じた。それを堪え、震える口から言葉を漏らす。


「私も…」

「花音の一番は祥多だろ~」


 私も直ちゃんが好きだよ。そう、全てが紡がれる前に直樹は言った。

 花音は大きく首を横に振り、直樹の言葉を否定する。


「ばか! 祥ちゃんも直ちゃんも私にとっては世界一大切だよ!!」

「ノンノン…」

「二人が一番大切でもいいでしょう?」


 直樹は泣きそうで嬉しそうに笑った。

 美香子が祥多の方を見やると、祥多は二人を見て幸せそうに笑んでいた。
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