To.カノンを奏でる君
「新ちゃんはね、祥多君と同じ病気だったの」
「え……」
「16の若さで静かに逝ったわ。最期に看取ったのは私。新ちゃんは律ちゃんに看取られる事を望まなかったから」
看取ったという由希の言葉に、花音は肩を大きく揺らして目を見開いた。
それは祥多との会話の中で一度出て来た言葉だ。
あれは、そう。祥多と同じ病気だった少女が逝った日に、泣く花音に祥多が言った言葉だ。
“渚の死でそんなになって、俺をどう看取る気だ?”
あの時花音は何も言えなかった。ただひたすらに泣いて謝るだけだった。
花音はそれを思い出し、俯いた。
「どうして、看取る事が出来たんですか。つらくなかったんですか」
自分には出来ないと思っている事を由希は成し遂げたのだ。
「つらかったわよ。苦しかった。でもどう足掻いても、新ちゃんの死は避けられない。大好きな新ちゃんを一人寂しく逝かせる事はしたくなかった。だから私は自分から看取ったの」
涙声に変わる由希の声に、花音は驚いて顔を上げた。由希の唇は涙を堪えるように震えていた。
「結局、新ちゃんは最期まで律ちゃんの幸せを願ってたんだけどね」
最後の一言で感極まったのか、由希はとうとう涙を流した。
花音は慌ててポケットからハンカチを差し出した。由希は苦笑しながら大丈夫だと答え、白衣のポケットからハンカチを取り出して目許に当てた。
「え……」
「16の若さで静かに逝ったわ。最期に看取ったのは私。新ちゃんは律ちゃんに看取られる事を望まなかったから」
看取ったという由希の言葉に、花音は肩を大きく揺らして目を見開いた。
それは祥多との会話の中で一度出て来た言葉だ。
あれは、そう。祥多と同じ病気だった少女が逝った日に、泣く花音に祥多が言った言葉だ。
“渚の死でそんなになって、俺をどう看取る気だ?”
あの時花音は何も言えなかった。ただひたすらに泣いて謝るだけだった。
花音はそれを思い出し、俯いた。
「どうして、看取る事が出来たんですか。つらくなかったんですか」
自分には出来ないと思っている事を由希は成し遂げたのだ。
「つらかったわよ。苦しかった。でもどう足掻いても、新ちゃんの死は避けられない。大好きな新ちゃんを一人寂しく逝かせる事はしたくなかった。だから私は自分から看取ったの」
涙声に変わる由希の声に、花音は驚いて顔を上げた。由希の唇は涙を堪えるように震えていた。
「結局、新ちゃんは最期まで律ちゃんの幸せを願ってたんだけどね」
最後の一言で感極まったのか、由希はとうとう涙を流した。
花音は慌ててポケットからハンカチを差し出した。由希は苦笑しながら大丈夫だと答え、白衣のポケットからハンカチを取り出して目許に当てた。