To.カノンを奏でる君
「花音ちゃん。看取るという事は、本当につらい事よ。特にその人が大切であればあるほど」
身を以て語る由希の言葉には重みがあり、花音は何も言えずに固唾を呑む。
「私はあれから十年以上経った今でも新ちゃんが好きよ。一生好きでいるかもしれない。貴女に、一生を捧げる覚悟はある? 祥多君に一生分の想いを捧げる覚悟はある?」
赤い目を向け、花音の覚悟を問う由希。花音はすぐに、はいと返事を返す事が出来なかった。
ただただ、恐怖の念だけが心中に渦巻いている。どうしていいか分からない。
まだ子どもの花音には難しすぎる問いであり、厳しい問いだった。
「意地悪を言うようだけど、それは花音ちゃんが嫌いだからじゃないわ。好きだから、つらい思いをして欲しくないの」
分かるわよね、と優しく言う由希に辛うじて花音は頷いた。
「祥多君にどんな未来が待ち受けていようと、貴女は受け入れていかなければならない。それしか進んでいく方法はないの」
「松岡さん…。祥ちゃんはそんなに助かる見込みがないの?」
花音の悲痛な問いに、今度は由希が黙り込む番だった。
簡単にそうだと言えるほど由希は無情ではないし、花音を傷つける事が嫌だと思っている。
しかしいずれにせよ傷つける事になると由希は分かっていた。少し深呼吸をして、由希は容赦なく有りのままの現状を口にした。
「今、祥多君の衰弱は目に見えて分かっているわよね?」
花音はこくんと小さく頷く。
身を以て語る由希の言葉には重みがあり、花音は何も言えずに固唾を呑む。
「私はあれから十年以上経った今でも新ちゃんが好きよ。一生好きでいるかもしれない。貴女に、一生を捧げる覚悟はある? 祥多君に一生分の想いを捧げる覚悟はある?」
赤い目を向け、花音の覚悟を問う由希。花音はすぐに、はいと返事を返す事が出来なかった。
ただただ、恐怖の念だけが心中に渦巻いている。どうしていいか分からない。
まだ子どもの花音には難しすぎる問いであり、厳しい問いだった。
「意地悪を言うようだけど、それは花音ちゃんが嫌いだからじゃないわ。好きだから、つらい思いをして欲しくないの」
分かるわよね、と優しく言う由希に辛うじて花音は頷いた。
「祥多君にどんな未来が待ち受けていようと、貴女は受け入れていかなければならない。それしか進んでいく方法はないの」
「松岡さん…。祥ちゃんはそんなに助かる見込みがないの?」
花音の悲痛な問いに、今度は由希が黙り込む番だった。
簡単にそうだと言えるほど由希は無情ではないし、花音を傷つける事が嫌だと思っている。
しかしいずれにせよ傷つける事になると由希は分かっていた。少し深呼吸をして、由希は容赦なく有りのままの現状を口にした。
「今、祥多君の衰弱は目に見えて分かっているわよね?」
花音はこくんと小さく頷く。