To.カノンを奏でる君
入院する前の春は、面倒臭がる祥多を無理やり連れて少し遠出して桜を見に行った。
夏には、草薙家と時枝家とで海へ行き、海水浴やバーベキューを楽しんだ。
秋には、共に近所の公園へ紅葉を見に行った。近場の為、紅葉見学の時だけは祥多は嫌がらなかった。
冬には、外に出て雪遊びに明け暮れた。体に負担をかけないよう、ほんの少し雪合戦をして、雪だるまを作った。
入院してからの春は、病室の窓から桜を見た。散っていく桜を、祥多は寂しそうに見つめた。
夏は、病室で共にアイスクリームを食べた。来年は海に行けたらいいねと花音は何度も言った。
秋は、病室で焼き芋を半分に割って温かさを共有した。
冬は、病室から雪を眺め、蜜柑を毎日頬張った。コタツを持って来ようかと提案する花音に、祥多は呆れていた。
たくさんの笑顔で溢れた思い出。刻まれた時間。
それがとても愛しかった。何よりも誰よりも大切な人。
祥多が入院する前は家族と過ごす時間より一緒に過ごしていた。何より、家族よりも互いを理解し合っていた。
祥多ならばきっと、花音の好きなものや大切なものを難なく答えられるだろう。母親よりもスラスラと。
祥多は家族以上の存在と言っても過言ではない。それなのに、もしも祥多がいなくなってしまったら。
(私はどうすればいいの?)
本当に分からなかった。心に大きな穴が空いて、自己を見失ってしまうような気がした。
夏には、草薙家と時枝家とで海へ行き、海水浴やバーベキューを楽しんだ。
秋には、共に近所の公園へ紅葉を見に行った。近場の為、紅葉見学の時だけは祥多は嫌がらなかった。
冬には、外に出て雪遊びに明け暮れた。体に負担をかけないよう、ほんの少し雪合戦をして、雪だるまを作った。
入院してからの春は、病室の窓から桜を見た。散っていく桜を、祥多は寂しそうに見つめた。
夏は、病室で共にアイスクリームを食べた。来年は海に行けたらいいねと花音は何度も言った。
秋は、病室で焼き芋を半分に割って温かさを共有した。
冬は、病室から雪を眺め、蜜柑を毎日頬張った。コタツを持って来ようかと提案する花音に、祥多は呆れていた。
たくさんの笑顔で溢れた思い出。刻まれた時間。
それがとても愛しかった。何よりも誰よりも大切な人。
祥多が入院する前は家族と過ごす時間より一緒に過ごしていた。何より、家族よりも互いを理解し合っていた。
祥多ならばきっと、花音の好きなものや大切なものを難なく答えられるだろう。母親よりもスラスラと。
祥多は家族以上の存在と言っても過言ではない。それなのに、もしも祥多がいなくなってしまったら。
(私はどうすればいいの?)
本当に分からなかった。心に大きな穴が空いて、自己を見失ってしまうような気がした。