To.カノンを奏でる君
 ピアノも諦めたのに、たくさんの事を譲歩したのに、こんな結末。
 ふざけんなって言ってやりたい。もちろん、神様って奴にさ。

 まぁでも、花音や直に出逢わせてくれた事だけは感謝してる。
 二人といた時間はめちゃくちゃ幸せだった。だから、それが一生続いて欲しいと願った。

 特にさ、花音とはいろんな約束したじゃん。それを果たせないのが悔しい。

 お前は後悔してないか?
 俺と出逢った事。

 俺は臆病で弱虫だからそんな事訊けなかった。
 あ、訊いただけだぞ。答えるなよ。今でも怖いんだからな。

 って冗談はこのくらいにしといて。

 苦しい時、つらい時、必ずお前が傍にいてくれた。隣で笑っててくれた。
 それだけで俺は頑張れた。
 お前が涙隠して笑ってくれてるってのに、死ぬわけにはいかねーって思ってさ。

 必死に生き抜いた。と、思う。

 本当にありがとな、花音。
 それだけしか言えないけど、許せよ。

 直にお前の事を頼んでおいた。だから、つらい時や泣きたい時は一人で抱え込まないで直に頼れよ、な?

 たくさん苦しめてごめんな。でも、苦しんだ分の幸せは絶対掴めるから。

 幸せになれよ。絶対。

 今までありがとう。それからごめん。
 ありきたりな文でごめんな。

 もっとカノンを弾きたかった。花音とピアノを弾きたかった。
 出来る事ならもう一度、一緒に弾きたかった。

 花音のピアノの音が、俺の中で一番最高で好きだった。

 ほんとにほんとーに、ありがとな、花音』
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