To.カノンを奏でる君
幸せなのだと、思っていた。大好きな人の傍にいられる事が。
例え眠り続けていようとも、傍にいられるだけで幸せなのだと思っていた。
しかしそれは違っていた。
祥多の為と何度も繰り返し、たくさんの事を諦めた。高校の友達も、憧れていた大学への進学も。
祥多の傍についてあげる為に全てを犠牲にした。
それが、祥多が目覚めた時に祥多を傷つける事になるとは気づかずに。
全て取り返しのつかないこの時まで来てやっと、間違いに気づいた。
「私……間違ってた」
「葉山」
「全部、全部、もう取り返せない! もう遅い──!」
わんわんと泣き続ける美香子の肩を、直樹は黙って抱き続けた。
一生懸命になりすぎて、美香子は大切なものを見失ってしまった。
祥多が悪い訳ではない。美香子が悪い訳でもない。
ただ時の流れが、起きてしまった事態が、美香子にそうさせてしまった。
確かに流されてしまった美香子も悪いが、一概には責められない。
「過ぎた事は取り返せない。でも、これからの事はこれからだ。頑張れよ」
「う、んっ…」
それぞれがもがき苦しんだ三年間。
苦しむのはもうこれで終わりにしなければならない。
これから新しい日々が待っている。
それを切り開いて行くのは、自分自身の両手だ。
「みんなが幸せになれる未来が待ち受けてるといいな」
祈りにも願いにも似た科白を口にし、直樹は小さな笑みを浮かべた。
例え眠り続けていようとも、傍にいられるだけで幸せなのだと思っていた。
しかしそれは違っていた。
祥多の為と何度も繰り返し、たくさんの事を諦めた。高校の友達も、憧れていた大学への進学も。
祥多の傍についてあげる為に全てを犠牲にした。
それが、祥多が目覚めた時に祥多を傷つける事になるとは気づかずに。
全て取り返しのつかないこの時まで来てやっと、間違いに気づいた。
「私……間違ってた」
「葉山」
「全部、全部、もう取り返せない! もう遅い──!」
わんわんと泣き続ける美香子の肩を、直樹は黙って抱き続けた。
一生懸命になりすぎて、美香子は大切なものを見失ってしまった。
祥多が悪い訳ではない。美香子が悪い訳でもない。
ただ時の流れが、起きてしまった事態が、美香子にそうさせてしまった。
確かに流されてしまった美香子も悪いが、一概には責められない。
「過ぎた事は取り返せない。でも、これからの事はこれからだ。頑張れよ」
「う、んっ…」
それぞれがもがき苦しんだ三年間。
苦しむのはもうこれで終わりにしなければならない。
これから新しい日々が待っている。
それを切り開いて行くのは、自分自身の両手だ。
「みんなが幸せになれる未来が待ち受けてるといいな」
祈りにも願いにも似た科白を口にし、直樹は小さな笑みを浮かべた。