To.カノンを奏でる君
 母は驚いたように目を丸くし、それから泣きそうな顔をした。


「ごめんね、花音」


 母もまた、謝りたいと思っていたのだ。


 いくら花音を思っての事とは言え、祥多との仲を邪魔していたのは事実。

 そのせいで祥多との貴重な時間を割いていた事に、母は非を感じていた。


 何について謝っているのか悟った花音は首を横に振った。


 やり方は少し間違っていたかもしれないが、母なりの愛情表現だったのだと花音は思っている。


「お互い様って事で」

「貴女がそれで良いのなら」

「じゃ、この話は終わりね。ご飯にしよ。私、祥ちゃんの所に行かなくちゃ」

「はいはい」


 見つからないと思っていた答えが見つかった。そして、母娘で初めてきちんと向き合えた。

 良い事だらけで、これからの全てが花音には快方に向かうような気がした。
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