To.カノンを奏でる君
花音は手をだらんと下ろし、小さく肩を震わせた。
痛々しくて堪らないその後ろ姿を、早河は思わず抱き締めた。そして懇願するかのように花音の耳許で呟く。
「俺、草薙につらい思いして欲しくない」
「早河君……」
花音はくるりと振り返り、早河と向き合う。
心配をかけないように、これ以上心苦しさを感じさせないように、笑った。
「大丈夫だよ、私。あのくらいでへこたれるもんか」
ガッツポーズで意気込む。
本人は気づいていないが、手が微かに震えていた。無理していると容易く分かる。
(あんな風に突き放されてもまだ、アイツの事……)
健気に祥多を想い続けようとする花音が痛ましくも、愛しくも思えた。
(俺だったら、そんな思いはさせない)
──気づけば、無理やり唇を重ね合わせていた。
逃がさないように花音の後頭部を強く押さえ、花音の腰に腕を回した。
突然の事に花音は、状況を把握する事が出来なかった。
分かる事はただ一つ、息苦しい。
どのくらいの間、そうしていただろう。それすら分からない内に花音は解放された。
「早河く……」
動揺してうまく言葉を紡げないでいる花音に、早河は堪らず再度手を伸ばした。
夕闇が迫る中、二つの影が一つになる。
早河の腕の中で、花音は混乱していた。本当に何が何だか分からない状態でいる。
「早河君?」
辛うじて上げる事の出来た声は、花音自身、驚くほどにか細く頼りなさそうな弱々しい声だった。
痛々しくて堪らないその後ろ姿を、早河は思わず抱き締めた。そして懇願するかのように花音の耳許で呟く。
「俺、草薙につらい思いして欲しくない」
「早河君……」
花音はくるりと振り返り、早河と向き合う。
心配をかけないように、これ以上心苦しさを感じさせないように、笑った。
「大丈夫だよ、私。あのくらいでへこたれるもんか」
ガッツポーズで意気込む。
本人は気づいていないが、手が微かに震えていた。無理していると容易く分かる。
(あんな風に突き放されてもまだ、アイツの事……)
健気に祥多を想い続けようとする花音が痛ましくも、愛しくも思えた。
(俺だったら、そんな思いはさせない)
──気づけば、無理やり唇を重ね合わせていた。
逃がさないように花音の後頭部を強く押さえ、花音の腰に腕を回した。
突然の事に花音は、状況を把握する事が出来なかった。
分かる事はただ一つ、息苦しい。
どのくらいの間、そうしていただろう。それすら分からない内に花音は解放された。
「早河く……」
動揺してうまく言葉を紡げないでいる花音に、早河は堪らず再度手を伸ばした。
夕闇が迫る中、二つの影が一つになる。
早河の腕の中で、花音は混乱していた。本当に何が何だか分からない状態でいる。
「早河君?」
辛うじて上げる事の出来た声は、花音自身、驚くほどにか細く頼りなさそうな弱々しい声だった。