To.カノンを奏でる君
「草薙」

「あ、うん。じゃあみんな、来月落ち着いたら一度帰るから」

「気をつけてね。あと、応援してる」

「ん、ありがと。美香子ちゃんも、」


 花音は美香子の耳許で囁く。


「頑張ってね。直ちゃんは一筋縄では落ちないよ?」

「っ?! 花音ちゃん!」

「あははっ」

「ノンノン。初恋成就、おめでとう」

「うん、ありがと。直ちゃんのお陰だよ」

「アタシは、どんな事があってもノンノンの味方よ」

「分かってる」


 美香子や直樹と挨拶を済ませ、花音は祥多を見つめた。とびきりの笑顔を向けると、祥多も笑顔で花音を見つめる。


「気をつけろよ」

「うん」

「じゃ、行ってこい」

「行って来ます!」


 花音は大きく手を振り、早河について改札口を通って行った。

 残った三人は見えなくなるまでその後ろ姿を見つめ、二人の健闘を祈る。


「私達も頑張らなきゃね」

「ええ。負けてらんないわっ」

「んじゃ、行くか」


 二人は祥多の言葉に頷き、歩き出した。


「そういや葉山、これからどうすんだ?」

「美容の専門学校行くの。メイクアップアーティストとか憧れてて」

「葉山らしいな。直はスタジオか…」

「ええ! アタシ今めちゃくちゃ燃えてるわ!」

「ハイハイ。あ、俺さ、高校行くのやめて大検受けようかと」

「そういえば、それもありね。タータン頭良いから大丈夫じゃない?」

「いや、全然高校の勉強してねぇから何とも…」

「祥多君なら大丈夫だよ」

「サンキュ、葉山」

「ちょ、アタシと扱い違う!」

「うっせぇな」

「何よ~っ」

「くすくす……」


 そうして、彼らもまた、それぞれの未来に向かって一歩を踏み出した──。















< 336 / 346 >

この作品をシェア

pagetop