To.カノンを奏でる君
「え? トロイメライ?」
花音はいきなりの注文に首を傾げる。
「タータンじゃ全っ然ダメなのよ」
直樹に誘われ、花音はピアノと向き合う形になっていた。
「いいの? 祥ちゃん」
「別に」
若干不貞腐れている祥多に苦笑し、花音はトロイメライを奏でる。
直樹は満足げに、二、三度頷いた。
「やっぱりノンノンじゃなくちゃね」
うっとりとした表情で聴き入る直樹を、祥多は思いきり睨みつけた。
花音はあっという間に弾き終えた。直樹が名残惜しそうに閉じていた目を開ける。
「ノンノン、もう一回!」
「俺が弾けねーだろ!」
直樹の懇願をよそに、祥多の為に花音はピアノを譲る。
祥多の貴重な時間なのだ。
「ありがと、ノンノン」
「どういたしまして」
そんな会話が交される中、祥多はランゲ作曲『花の歌』を奏でる。
「アタシ、ノンノンの弾くトロイメライが本当に大好きなのよー」
「ありがとう。トロイメライは直ちゃんの為にしか弾かないよ」
「あ、それ凄く感動するわ!」
「で、カノンは祥ちゃんの為にしか弾かないの」
「ふーん。でも何か嬉しいわね」
「そ?」
「うん。……にしてもカノンってさ、ノンノンが初めて覚えた曲なのよね」
「うん。祥ちゃんから習った」
「タータンは何でこの曲に入れ込んでるの?」
さっきの事を根に持ってるのか演奏に浸っているのか、祥多は答えない。
花音はいきなりの注文に首を傾げる。
「タータンじゃ全っ然ダメなのよ」
直樹に誘われ、花音はピアノと向き合う形になっていた。
「いいの? 祥ちゃん」
「別に」
若干不貞腐れている祥多に苦笑し、花音はトロイメライを奏でる。
直樹は満足げに、二、三度頷いた。
「やっぱりノンノンじゃなくちゃね」
うっとりとした表情で聴き入る直樹を、祥多は思いきり睨みつけた。
花音はあっという間に弾き終えた。直樹が名残惜しそうに閉じていた目を開ける。
「ノンノン、もう一回!」
「俺が弾けねーだろ!」
直樹の懇願をよそに、祥多の為に花音はピアノを譲る。
祥多の貴重な時間なのだ。
「ありがと、ノンノン」
「どういたしまして」
そんな会話が交される中、祥多はランゲ作曲『花の歌』を奏でる。
「アタシ、ノンノンの弾くトロイメライが本当に大好きなのよー」
「ありがとう。トロイメライは直ちゃんの為にしか弾かないよ」
「あ、それ凄く感動するわ!」
「で、カノンは祥ちゃんの為にしか弾かないの」
「ふーん。でも何か嬉しいわね」
「そ?」
「うん。……にしてもカノンってさ、ノンノンが初めて覚えた曲なのよね」
「うん。祥ちゃんから習った」
「タータンは何でこの曲に入れ込んでるの?」
さっきの事を根に持ってるのか演奏に浸っているのか、祥多は答えない。