To.カノンを奏でる君
落ち着いたところで改めて、花音は祥多を見つめた。
「コンクール。金賞」
一音一音ゆっくり発音した。
本日行われたピアノコンクールで、花音は見事金賞を獲得したのだ。三つの部門に用意されていた三つの金賞楯の中の一つを受け取った。
「ふーん。オメデト」
さして興味がないように言われ、花音は一気に落ち込む。
コンクールまで教えてくれたのはピアノ教室の先生だけではない。祥多も病院内にあるピアノで教えてくれ、練習に付き合ってくれた。
「嬉しく、ないの?」
頑張ったと胸を張って言える。その結果を、彼に一緒に喜んで欲しい。
「んなわけねーだろ」
頭を掻き、祥多は溜め息を吐く。
そう、嬉しくないわけではない。
「嫉妬ってヤツ」
祥多は素直に思いを口にした。
祥多もピアノが好きだ。だからこそコンクールに出たいという願望は湧く。しかし、現実がそれを許さない。
「ごめん、祥ちゃん。軽率だった」
花音は俯き、謝る。
一緒に喜びたくて真っ先に教えに来たというのに、傷つけてしまった。
どうして気づかなかったのだろう。少し考えればすぐに分かる事なのにと、花音は唇を噛む。
「謝んなよ。花音が悪いわけじゃねーし」
「でも」
「いーって言ってんの。悪いと思ってんなら“祥ちゃん”やめろ」
「コンクール。金賞」
一音一音ゆっくり発音した。
本日行われたピアノコンクールで、花音は見事金賞を獲得したのだ。三つの部門に用意されていた三つの金賞楯の中の一つを受け取った。
「ふーん。オメデト」
さして興味がないように言われ、花音は一気に落ち込む。
コンクールまで教えてくれたのはピアノ教室の先生だけではない。祥多も病院内にあるピアノで教えてくれ、練習に付き合ってくれた。
「嬉しく、ないの?」
頑張ったと胸を張って言える。その結果を、彼に一緒に喜んで欲しい。
「んなわけねーだろ」
頭を掻き、祥多は溜め息を吐く。
そう、嬉しくないわけではない。
「嫉妬ってヤツ」
祥多は素直に思いを口にした。
祥多もピアノが好きだ。だからこそコンクールに出たいという願望は湧く。しかし、現実がそれを許さない。
「ごめん、祥ちゃん。軽率だった」
花音は俯き、謝る。
一緒に喜びたくて真っ先に教えに来たというのに、傷つけてしまった。
どうして気づかなかったのだろう。少し考えればすぐに分かる事なのにと、花音は唇を噛む。
「謝んなよ。花音が悪いわけじゃねーし」
「でも」
「いーって言ってんの。悪いと思ってんなら“祥ちゃん”やめろ」