To.カノンを奏でる君
第5楽章≫大切な人達とクリスマス。
放課後までの日程が、いつもより長く感じた。
そう、楽しい時間はあっという間なのに対し、その楽しみを待つだけの時間は長く感じる。
花音は慌てて帰り支度をした。そんな花音の傍には既に準備を終えた直樹が立っている。
案外、今日のパーティを一番心待ちにしているのは直樹の方かもしれない。
「先にお菓子類買って、最後にケーキ買うのよね?」
花音は頷き、リストを手渡す。
「早く行こ!」
楽しそうに笑い急かす直樹に、花音は教科書を詰め終えて席を立った。
現在の時刻は4時23分。買い物で三十分だとして、パーティーを始めるのは5時になりそうだ。
案の定、祥多の病室に着いたのは5時少し前だった。
花音はケーキとお菓子を、直樹はジュースを持って祥多の病室に足を踏み入れる。
「やっ! メリークリスマスイヴ!」
花音はそんな挨拶をしながら荷物を置く。お菓子は祥多のベッドに、ケーキは食事に使うテーブルに。
直樹はケーキの傍にジュースを置いた。
「悪ィな、いろいろ準備させて」
祥多は申し訳なさそうな言う。
花音も直樹も笑いながら首を振る。
「じゃ、始めましょうか」
ガサガサとお菓子やジュースを袋から出して広げる。
「はいこれ、祥ちゃんのリンゴジュース」
ペットボトルを祥多に渡す。
「これは私のオレンジで、これは直ちゃんのストレートティー」