To.カノンを奏でる君
 そうやって有頂天の花音を横目に、直樹は白い包装紙のプレゼントをこっそり祥多に渡す。

 祥多は気づいたように受け取る。


「て、お前これ何買ったんだ? 小さすぎだろ」


 祥多は小声で直樹に訴える。


「大丈夫よ。“いつでも身につけていられる物”だから」

「……まさか指輪じゃねーよな」

「バカねぇ、そんな大切な物アタシが代理で買うわけないじゃない」

「だよな」


 祥多は安心して一息吐く。


「何コソコソ話してるの、祥ちゃん直ちゃん」

「え?! あ、はは、何でもないわよー」


 直樹は笑って誤魔化し、肘で祥多をつつく。早く渡せという合図だ。


「ん、」


 祥多は花音にその白い包装紙を渡す。

 花音は更に嬉しそうに笑った。


「ありがとう、祥ちゃん!」


 大切そうに抱き抱え、手放さない。


「ほらほら、開けて見せてよノンノン」

「うん」


 封を切った花音はその小さな袋を逆にする。


 シャラッ…


 花音の左手に滑り落ちたのは、銀色のプレートのペンダント。


「わ…」


 花音は思わず声を上げた。


 表は小さな花模様が彫られている。不意に裏を見て、目を見開いた。


「To.Kanon…」


 これにはさすがの祥多も驚いた。直樹は祥多にウィンクを送る。

 本来ならば彫る事もペンダント自体も高いのだが、直樹の両親が経営しているアクセサリー店で購入した物なので、祥多の出した予算内だ。
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