To.カノンを奏でる君
差し出された一杯の水を礼を言いながら飲み干した。それから花音の母に支えられ、二階へ上がる。
それだけでも重労働だ。既に祥多の息はあがっている。
「大丈夫なの?」
「平、気です……」
ジャケットの胸元を押さえながら懸命に落ち着こうとする。
花音の母は花音の部屋のドアをノックした。それから返事を待たずに入る。
「花音、調子はどう?」
花音はむくりと起き上がり、母の方を見遣る。そして目を見開いた。
「祥ちゃん……?!」
目線の先には、キャップ帽を握り絞めた祥多の姿。おぼつかぬ足取りで部屋の中に入って来る。
花音の母は祥多が入るのを見届け、部屋から出て行った。
二人残された部屋は、静かになる。
「祥、ちゃん……どうして……」
祥多は花音の問いに答えられぬまま、崩れるように花音を抱き締めた。それから腕に力を込める。
「ごめん。俺…、何も…!」
「祥ちゃん……」
「ごめんな」
つらそうな声が、だんだんと泣き声に変わっていく。
「本当にごめん…っ」
花音は心を痛めた。
祥多がどれほど謝罪の気持ちでいっぱいなのかが伝わる。
わざわざ病院を抜け出してまで祥多が来る事など、今までに一度もなかったからだ。
「謝らないでよ、祥ちゃん」
そう言うのが精一杯だった。
「休めって言われてたのに、ちゃんと休まなかった私の自業自得なんだよ」
涙が零れ落ちそうになるのを堪えながら、花音は祥多に言い聞かせる。
それだけでも重労働だ。既に祥多の息はあがっている。
「大丈夫なの?」
「平、気です……」
ジャケットの胸元を押さえながら懸命に落ち着こうとする。
花音の母は花音の部屋のドアをノックした。それから返事を待たずに入る。
「花音、調子はどう?」
花音はむくりと起き上がり、母の方を見遣る。そして目を見開いた。
「祥ちゃん……?!」
目線の先には、キャップ帽を握り絞めた祥多の姿。おぼつかぬ足取りで部屋の中に入って来る。
花音の母は祥多が入るのを見届け、部屋から出て行った。
二人残された部屋は、静かになる。
「祥、ちゃん……どうして……」
祥多は花音の問いに答えられぬまま、崩れるように花音を抱き締めた。それから腕に力を込める。
「ごめん。俺…、何も…!」
「祥ちゃん……」
「ごめんな」
つらそうな声が、だんだんと泣き声に変わっていく。
「本当にごめん…っ」
花音は心を痛めた。
祥多がどれほど謝罪の気持ちでいっぱいなのかが伝わる。
わざわざ病院を抜け出してまで祥多が来る事など、今までに一度もなかったからだ。
「謝らないでよ、祥ちゃん」
そう言うのが精一杯だった。
「休めって言われてたのに、ちゃんと休まなかった私の自業自得なんだよ」
涙が零れ落ちそうになるのを堪えながら、花音は祥多に言い聞かせる。