To.カノンを奏でる君
「花音。もう一つ、約束しねぇか」
「約束……?」
「俺の容体が変わった時――悪化した時は、来るのをやめてくれ」
「そんな!」
「頼む」
「……ズルイよ。祥ちゃん、いつだってそうやって」
「でもさ、大丈夫な内は会いに来てくれ。ずっと一緒だったじゃねぇか、俺ら」
その言葉を受けて、花音は黙り込んだ。
「何かあった時、傍にいてくれねーと気づけねぇよ…」
「祥ちゃん……」
花音はそっと目を閉じた。どうしたらいいものかと、最善の方法を考える。
今からしようとしている約束は、生温い約束じゃない。いざとなれば自分を捨てろと、遠回しに祥多は言っているのだ。
しかし花音は、すんなりそれを聞き入れられるほど無情ではない。
いろいろ考え、自問自答をしたが、納得のいく答えは見つからなかった。
閉じていた目を開く。
「分かった、約束する」
それが祥多の為になるなら。心臓に疾患のある祥多に脱走までさせた償いになるなら、受け入れよう。
それが祥多の願いならば。
「会いに行かなくてごめん、祥ちゃん」
申し訳なさそうな花音の言葉に、祥多は花音を放した。
ベッドに座ったまま、お互い見つめ合う。そうしてやっと安堵したように微笑む祥多に、花音もつられて笑った。
理屈など要らない。
近づき過ぎて何が悪い。他に惑わされずに、自分達の形を作って行けばいいのだ。
例えそれが周囲から間違っているように見えようとも、本人達にとってそれが最善ならそれが正解となる。
花音の迷いは、静かに消えた。
「ところで祥ちゃん」
「ん?」
「どうやって帰るの?」
「………あ」
──先の事までは考えていなかった祥多だった。
「約束……?」
「俺の容体が変わった時――悪化した時は、来るのをやめてくれ」
「そんな!」
「頼む」
「……ズルイよ。祥ちゃん、いつだってそうやって」
「でもさ、大丈夫な内は会いに来てくれ。ずっと一緒だったじゃねぇか、俺ら」
その言葉を受けて、花音は黙り込んだ。
「何かあった時、傍にいてくれねーと気づけねぇよ…」
「祥ちゃん……」
花音はそっと目を閉じた。どうしたらいいものかと、最善の方法を考える。
今からしようとしている約束は、生温い約束じゃない。いざとなれば自分を捨てろと、遠回しに祥多は言っているのだ。
しかし花音は、すんなりそれを聞き入れられるほど無情ではない。
いろいろ考え、自問自答をしたが、納得のいく答えは見つからなかった。
閉じていた目を開く。
「分かった、約束する」
それが祥多の為になるなら。心臓に疾患のある祥多に脱走までさせた償いになるなら、受け入れよう。
それが祥多の願いならば。
「会いに行かなくてごめん、祥ちゃん」
申し訳なさそうな花音の言葉に、祥多は花音を放した。
ベッドに座ったまま、お互い見つめ合う。そうしてやっと安堵したように微笑む祥多に、花音もつられて笑った。
理屈など要らない。
近づき過ぎて何が悪い。他に惑わされずに、自分達の形を作って行けばいいのだ。
例えそれが周囲から間違っているように見えようとも、本人達にとってそれが最善ならそれが正解となる。
花音の迷いは、静かに消えた。
「ところで祥ちゃん」
「ん?」
「どうやって帰るの?」
「………あ」
──先の事までは考えていなかった祥多だった。