恋々綴り。【短編集】

#12



「それ、なんの香り?」


「え?」


 委員会。とてもつまらないもので、とりわけ必要な話でもなかったこと。同じ生活委員の水谷君が言った。

 身に覚えがない私にとって、自分を指差されたことは予想外。

 無臭なら言うわけ無い。
 あ。


「タンスの中にポプリ入れてるけど、それ?」


 百均って侮れない。一番好みなラベンダーの匂いのポプリがあったんだもの。

「ふーん、いい匂いだな」

 って言って顔を服に近付けるから。


「え!? わぁ!!」


 パイプ椅子から転げ落ちたのは言うまでもない。周りに変な顔されてたけど、水谷君は本気で心配そうな顔。



 ……天然ってズルい。



Fin
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