恋々綴り。【短編集】

#19



 桜が舞散る季節が終わり、葉桜になったのを見ると若かりし日々を思い出します。にこやかなものではなかったあの時代は今よりも自然に溢れていたような。ただ、足の不自由だった私に優しく接してくれたのが本当に嬉しくて。

 外で遊んでいる同い年の女の子をぼんやりと眺めていると、貴方が隣に座って話し掛けてくれたのもこの季節。



 貴方が、亡くなったと知らされたのもこの季節。



 私は、ただ、宛先がない手紙を書いてはたんすの奥にしまっている。



Fin
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